オーケストラはクラシックの敷居を下げるな

新規のファンを獲得しようと頑張る各オーケストラ。しかし、やりすぎは禁物です。無理に敷居を下げる弊害について取り上げます。

無理に敷居を下げる弊害

今日のクラシック音楽界のトレンドとしては、新規のファンを増やそうという取り組みが盛んです。
それ自体は良いのでしょうが、やり方がまずいせいで、コンサートホールでのトラブルが増えています。
この原因ははっきり言って客層の質が低下していることが原因に他なりません。

コンサートホールでのトラブル

近年報告されているのが、コンサートホールでのトラブルです。
どんなものがあるかというと、騒音問題です。
単純に「演奏中なのにうるさい」というケースと「余韻を壊された」というケースがあります。

演奏中なのにうるさい

音を聞きに来ているのですから音を出さないのが鉄則なのですが、どういうわけか雑音が発生します。
生理的現象やわずかな物音ならともかく、ビニールのガサガサや話し声など、目に余るケースもあります。
昔からある定番問題とはいえ、演奏に集中している人の妨げとなる騒音の発生は困ったものです。

余韻を壊された

コンサートホールでの鑑賞を楽しみとしている人以外にはピンとこないかもしれませんが、余韻は大事です。
例えば、静かに消えいるように終わる楽曲やレクイエムなどで厳かな気分であるにもかかわらず、間髪入れず「ブラボー!」と叫ばれたら、一気に台無しになるのです。
盛り上がって終わる曲や聴衆全体の気分が高まっている時などでは良いのでしょうが、上記のケースで間をおかずにブラボーと叫ぶのは、演奏会の破壊でしかありません。
にもかかわらず、最近は余韻を壊す「フライング・ブラボー」(フラブラ)や「フライング拍手」(フラ拍)の問題が顕在化してきました。
「余韻を大切に」とプログラムに表記して注意喚起するオーケストラまで現れ始めています。
それほどクレームが入っているのでしょう。
また、自己顕示欲の強い「ロング・ブラボー」(ロンブラ)なども嫌われています。
要するに空気の読めない自己勝手なブラボーや拍手で演奏会を台無しにする聴衆の例が増えているのです。

無理が通れば道理がひっこむ

私自身も何度かひどいケースに遭遇しました。
チャイコフスキーの悲愴交響曲で汚いフラブラ・ロンブラ氏に出くわしたこともありますし、うるさすぎる物音に至っては数え切れません。
ですが、彼らと対話すると「自分の権利だ。何が悪い」や「それは寛容ではない。だからクラシック界は閉鎖的なんだ」などと言われてしまうのです。
マナーやモラルは努力義務であって、たしかに法律で規制されているわけではありません。
そうすると、「何が悪い」「閉鎖的だ」と言われると困ってしまうのですが、周りに迷惑をかけないということを当たり前に考えられないという思考…。
彼らは聞く耳を持たないので、話しても無駄だと思いました。

なぜ、客層の質が低下しているか

このように、客層の質が低下して会場でのトラブルが増えているのですが、その諸悪の根源は無理にクラシックの敷居を下げようとする風潮にあります。
これが全ての原因です。
無理にクラシックの敷居を下げて、粗悪な客が混じるようになったから問題が起きるのです。
「え?でも新規のファンは重要では??」という声も聞こえてきそうです。
もちろん、聴衆の高齢化の解消は重要でしょう。新しいお客さんもある程度は入って入れ替わるべきなのでしょう。
しかし、教育されていない新規の顧客は問題を引き起こすだけです。
そして、問題を引き起こすと常連客やお得意さんが去っていきます。
居心地が悪くなるのですから当然です。
何度も言いますが、どの業界でも教育されていない新規の顧客は呼び込むべきではありません。
客層が悪くなって上得意客が離れてしまう現象が必ず起きるからです。
例えば一定のクラス以上の客室に泊まると、プライベートなラウンジが利用出来る高級ホテルがあります。
そのラウンジで、最近、マナー違反の客が増えているというのです。
それも結局、「金を払ったのだから何をしても良い」と考えている節の粗悪な宿泊客が利用するようになったからに他なりません。
こういった光景を目の当たりにし、一向に改善されないようであれば、お得意さんはそのホテルの利用をやめるだけです。
同じことがクラシック界でも起きています。
何度かひどいマナー違反のケースに遭遇してしまえば、コンサート会場から足が遠のいてしまいます。
つまり、各オーケストラは良かれと思って新規顧客の獲得を推進しているのですが、教育をしていないがゆえにトラブルが起き、既存客が離れつつあるのです。
誰もお得意さんを失いたくはないと思いますが、現実的にはコンサート離れする良質な客のケースが増えているように聞き及んでいます。

教育を徹底せよ

お客さんにとってもオーケストラにとっても、これは不幸なことでしかありません。
そういった点を解消するためにも、顧客への教育を施すことをおすすめします。
プログラムへの記載やアナウンスなどはどこもやっていますが、直接的なレクチャーも大切でしょう。
また、「クラシックを聴くということは高尚である」という世間一般のイメージを無理に改善しようと思わないことです。
現にコンサートホールでは、色々なマナーやしきたりがあります。
はっきり言えば、クラシックコンサートは客を選ぶというべきでしょうし、また、そうであるべきです。
既存客はちょっとおしゃれをしてランチをして会場に行くのを楽しみにしているのですから、敷居が低くなって粗悪な客が混じれば、せっかくのコンサートが台無しになり、「もう、行きたくない」ということになってしまいます。
敷居があると思われていることが、既存客のステータスになっているのです。
その点を認識していないのではないでしょうか?
無論、音楽を聴くにあたり服装は関係ありませんし、敷居なんてありません。世間一般の思い込みです。
でも、それのおかげで著しい下層を遠ざけていたのですから、その敷居をなくそうとすれば質の悪い客が入り込むようになるのは当然の結果でしょう。

敷居が高いから客が来ないという妄想

そもそも、敷居が高いから客が来ないという誤った仮説から出発しているように思えます。
敷居が高くても回っているところは回っていますよ?
そういった会社やお店と違う点は、既存客へのサポートができていないということです。
一人あたりの顧客の売上高・寄付金額が低く、既存客で回しきれていないことが問題なのです。
つまり、オーケストラが今すべきことは、新規の顧客を獲得することではなく、既存客へのフォローなのです。優先順位としてはそうなります。
と、いうのも、新規顧客を捕まえて上得意客まで育てるのには時間と手間とコストが大きくかかりますが、既存客へのフォローであれば、時間も手間もコストも軽減されるからです。
なぜ、体力のないオーケストラが既存客へのフォローをせずに、手間ばかりかかる見込み客ばかり集めようとしているのでしょうか。
これは要するに経営の基本を理解していないということでしょう。
一見さんに依存しているところは短い生涯であることが多いのです。
いかに既存客に支出させるかが商売の勝負どころなのです。それを分かっていないように思えます。
この点については、オーケストラの経営難と経営破綻を回避する方法という記事ページを参照してみてください。

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